熊本の経審|点数の差はどこでつく?上位・中位・下位を比べて分かった「取りこぼし」

熊本の経審|点数の差はどこでつく?上位・中位・下位を比べて分かった「取りこぼし」 経審・公共工事

経営事項審査(経審)の点数は、公共工事の入札で会社の力をあらわす点数です。同じ地域・同じ業種の会社でも、点数には大きな差があります。では、その差はどこでついているのでしょうか。

当法人では、熊本県の土木一式で格付を受けている会社を経審の点数で「上位」「中位」「下位」の3つに分け、公表されている経審の結果を見比べました。その結果、上位と中位の差は「売上と1級の技術者の数」、中位と下位の差は「手続きで取れる加点」でつく、という傾向がはっきり出ました。

この記事では、その傾向と、点数が伸び悩んでいる会社が取りこぼしやすい5つの項目をまとめます。

この記事のポイント

  • 上位と中位の差は、完成工事高(売上)と1級の技術者の数でつきます。ここは時間をかけて伸ばす部分です
  • 中位と下位の差は、「社会性等(W)」がいちばん大きく、手続きや資格で取れる加点の差です
  • 下位の会社は、退職金の制度・防災協定・建設業経理士を取りこぼしていることが多く、中位の会社はほぼ取っています
  • 令和8年7月から「建設技能者を大切にする企業の自主宣言」(5点)が新しく加わりました
  • 手続きと資格だけで、中位との差の半分近くを埋められる会社があります

経審の点数(P点)の仕組み

経審の総合評定値(P点)は、5つの項目の点数に重みを掛けて足したものです(建設業法施行規則 第21条の3)。

項目中身重み
完成工事高(X1)業種ごとの完成工事高25%
経営規模(X2)自己資本額と利益額15%
経営状況(Y)財務の健全さ(8つの指標)20%
技術力(Z)技術職員の数と資格、元請の完成工事高25%
社会性等(W)社会保険・退職金・防災協定・経理など15%

このうち、X1・X2・Y・Z は売上や決算、人の採用で決まるので、すぐには動きません。 一方で W は、制度に入る・宣言する・資格を取るといった「手続き」で上がる項目が多く、決算日までに整えれば次の経審に入ります。

上位と中位の差は「売上と1級の技術者の数」

点数の高い会社と真ん中の会社を比べると、差の大部分は技術力(Z)と完成工事高(X1)から来ていました。

上位中位下位
土木の完成工事高(中央値)約3億5,000万円約5,200万円約2,500万円
1級の技術者の人数(中央値)7人2人0人
技術職員の合計(中央値)12人4人2人

上位の会社は、1級の技術者が何人もいて、売上の規模も大きい会社です。ここに追いつくには、受注を増やし、技術者を採用・育成するという、時間のかかる取り組みが必要です。

中位と下位の差は「手続きで取れる加点」

一方、真ん中の会社と点数の低い会社を比べると、差がいちばん大きかったのは社会性等(W)でした。売上の差よりも大きく出ています。

社会性等の項目ごとに、取れている会社の割合を比べると、次のとおりです。

項目上位中位下位
退職金の制度ほぼ全社約6割約2割
防災協定ほぼ全社約9割約5〜6割
建設業経理士(1級・2級)約9割約4割約1割
建退共(建設業退職金共済)ほぼ全社約9割約7割
CPD(技術者の講習の単位)約8〜9割約1〜2割ほとんど無し

上位の会社は、手続きで取れる項目をほぼ取り切っています。点数が伸び悩んでいる会社ほど、同じ手続きを取りこぼしていることが分かります。

下位の会社が取りこぼしやすい5つの項目

ここからは、取りこぼしが多く、しかも点数の伸びが大きい項目を5つ紹介します。P点の上がり幅は、ほかの数字が変わらない場合のおおよその目安です(社会性等の点数の端数によって、1〜2点前後します)。

1. 退職金の制度|P点でおよそ20点

社会性等の「退職一時金制度若しくは企業年金制度導入の有無」の項目です。中小企業退職金共済(中退共)に入っていなくても、就業規則に退職手当の定めがあれば対象になります。 熊本県の経営事項審査の手引きには、次のように書かれています。

(1)労働協約もしくは就業規則に退職手当の定めがあるか又は退職手当に関する事項についての規則が定められている。

(2)中小企業退職金共済法に規定する中小企業退職金共済契約を締結し、加入している。

なお、中退共と建退共は、同じ人が二重に加入できません。 現場で働く方を建退共に入れている会社は、就業規則で退職金の定めを置く形にすると、両方の加点を取れます。従業員が常時10人以上の会社は、労働基準監督署に届け出た就業規則(受付印のあるもの)で確認されます。

2. 防災協定|P点でおよそ26点

国・県・市町村と、災害時の活動について協定を結んでいると加点されます。会社が直接結んでいなくても、加入している業界団体が協定を結んでいて、会社がその防災活動で一定の役割を担っていることが確認できれば、対象になります。 団体の証明書や防災活動計画書などで確認されます。

協定に単価が決まっているものや、協定の相手を入札で決めているものは、原則として対象外とされています。

3. 建設業経理士(2級)|1人でP点およそ8〜13点

社員に建設業経理士(登録経理試験)の合格者がいると加点されます。点数は会社の完成工事高の規模で変わり、年間平均の完成工事高が1億円未満の会社なら、2級が1人いるだけで10点(P点でおよそ13点)です。1億円以上10億円未満の会社では、2級1人で6点、2人で8点、3人で10点です。

ただし、2級は合格した年度の翌年度から5年を過ぎると数えられなくなります。 続けて加点を受けるには、講習を受けて更新する必要があります。

4. 建設技能者を大切にする企業の自主宣言|P点でおよそ6〜7点

令和8年7月1日以降の経審の申請から、新しく加わった項目です(5点)。国土交通省の自主宣言制度のホームページで宣言し、取り組みを行う旨の誓約書を出すと加点されます。審査基準日(決算日)の時点で宣言していることが条件です。費用はかからず、どの会社でも取りやすい項目です。

制度が始まったばかりなので、まだ宣言している会社はほとんどありません。

5. 1級の技術者(または監理技術者補佐)

中位の会社はほぼ全社に1級の技術者がいるのに対し、下位の会社の約6割は1級の技術者が0人でした。1級の施工管理技士を1人そろえることは、点数の面でも、入札のランク(等級)の条件の面でも、大きな一歩になります。

すぐに1級がいなくても、「1級の技士補(第一次検定の合格者)」で、同じ業種の主任技術者になれる資格(2級の施工管理技士など)も持っている方は、「監理技術者補佐」として1人4点で数えられます(2級だけなら2点)。第一次検定に合格した方がいないか、確かめてみてください。この区分を使っている会社は、上位の会社でもまだ一部でした。

手続きと資格で、どれくらい詰められるか

点数の低い会社の中央値で試算すると、次のようになりました(令和8年7月以降のルール)。

取り組みP点の上がり幅(目安)
自主宣言+退職金の制度+建退共およそ+26点
上の3つ+防災協定+2級の経理士1人およそ+46点

中位の会社と下位の会社のP点の差は、中央値どうしで比べて約100点です。手続きと資格だけで、その差の半分近くを埋められる計算になります。もちろん、すでに取っている項目は上がらないので、上がり幅は会社によって違います。

気をつけること

  • 社会性等の加点は、審査基準日(決算日)の時点で整っている必要があります。 決算日を過ぎてから入っても、次の経審には入りません
  • それぞれの項目には、加入証明書・協定書・合格証などの確認書類が要ります
  • 上がり幅は、いまの決算の数字が変わらないとしたときの目安です
  • 入札のランク(等級)は、経審の点数に、県や市が独自に付ける点数を足して決まります。ランクまでの距離は、発注機関ごとに確かめる必要があります

よくある質問

どの項目をもう取っているかは、どこで分かりますか

毎年届く「経営規模等評価結果通知書」の右側の「その他の審査項目(社会性等)」の欄に、項目ごとに「有」「無」や人数が書かれています。「無」になっている項目が、取りこぼしの候補です。

決算日の直前に整えても間に合いますか

審査基準日(決算日)の時点で整っていれば対象になります。ただ、就業規則の届出や協定への参加、資格の取得には時間がかかるので、決算日の3か月くらい前から動き出すのがおすすめです。

点数の低い会社は、まず何から手を付ければよいですか

費用がかからず確実なのは、自主宣言です。次に、就業規則に退職金の定めを置くこと、業界団体を通じた防災協定への参加、経理担当の方の建設業経理士2級の取得の順に検討するとよいと思います。

出典・参考

まとめ

  • 経審の点数の差は、上位と中位では「売上と1級の技術者の数」、中位と下位では「手続きで取れる加点」でついています
  • 下位の会社は、退職金の制度・防災協定・建設業経理士を取りこぼしていることが多く、中位の会社はほぼ取っています
  • 令和8年7月から加わった自主宣言は、費用がかからず取りやすい項目です
  • 「1級の技士補+同じ業種の2級」などの方がいれば、監理技術者補佐として1人4点で数えられます
  • 手続きと資格だけで、中位との差の半分近くを埋められる会社があります。決算日の3か月前から準備しましょう

経審の点数アップのコンサルティングも行っています

ノーサイド行政書士法人は、熊本の建設業許可・経営事項審査・入札参加資格申請を扱う行政書士法人です。経審の手続きだけでなく、点数を上げるためのご提案(コンサルティング)も行っています。

経審の結果が出たら、会社ごとに次のようなレポートをお作りしています(数字やお名前は伏せています)。

ノーサイド行政書士法人が作る経審の結果レポートの見本(数字と名前にモザイク)
経審の結果レポートの見本。今回の結果・点数の内訳・何をすると何点上がるか・入札のランクまでの道すじを、1社ずつまとめます
  • 今回の結果と、ここ数年の点数の動き
  • 点数の内訳:どの項目が強く、どこに伸びしろがあるか
  • 何をすると何点上がるか:会社ごとに、取りこぼしている項目と上がる点数を試算します
  • 入札のランク(等級)までの道すじ:発注機関の基準に合わせて、あと何点・何が足りないかをお示しします
  • 決算日から逆算した日程:いつまでに何を整えれば、次の経審に入るか

お手元の「経営規模等評価結果通知書」を見せていただければ、どの項目を取りこぼしているかをお調べします。点数が伸び悩んでいる会社ほど、手続きで取れる点が残っています。 お気軽にご相談ください。

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