「会社を作ったら、すぐに建設業許可を申請できますか」というご質問をよくいただきます。答えは、会社を作っただけでは申請できません。 新しく作った会社(新設法人)の許可申請で、いちばん日数が読みにくいのは、実は社会保険の書類が届くまでです。
この記事では、熊本県知事の建設業許可を新設法人で取るときの流れを、会社の設立から許可が出るまで順番にまとめました。とくに、申請の日を決めてしまう社会保険の通知書と、期限のある残高証明書のぶつかり方を詳しく書いています。経管(経営業務の管理責任者)と営業所技術者を誰にするかは、新設法人で建設業許可を取るには|経管と営業所技術者を誰にするか【熊本】をご覧ください。
この記事のポイント
- 会社は社長1人でも社会保険(健康保険・厚生年金)の強制加入です。加入していないと許可は取れません
- 申請書には、社会保険の事業所整理記号・事業所番号を書く欄があります。この番号は年金事務所から届く適用通知書で初めて分かります
- 通知書が手元に届くまで、加入してから数週間かかることがあります。これが申請できる日を決めます
- 新設法人は、500万円以上の残高証明書(申請日前1か月以内)が要ります。社会保険の通知を待っている間に期限が切れないよう、取る順番に気をつけます
- 設立から許可まで、順調に進んでも2か月前後は見ておくのが安全です
全体の流れ
| 段階 | やること | 日数の目安(当法人の実例) |
|---|---|---|
| 1 | 経管・営業所技術者を決め、証明書類を集め始める | 資格なら数日。10年の実務経験なら1〜2か月以上 |
| 2 | 会社の設立登記・役員の就任登記 | 登記簿が取れるまで2週間ほど |
| 3 | 社会保険の新規適用届・資格取得届 | 設立から5日以内に届出 |
| 4 | 適用通知書・標準報酬決定通知書が届く | 届出から手元に届くまで2〜4週間ほど |
| 5 | 残高証明書を取る | 申請日前1か月以内のもの |
| 6 | 申請 | 手数料9万円(熊本県収入証紙) |
| 7 | 許可 | 申請から2〜3週間ほど |
日数は当法人がこれまでに扱った案件での目安です。法務局・年金事務所・県の混み具合で前後します。
1. 会社を作る前に決めておくこと
経管と営業所技術者
新設法人でいちばん大事なのは、経管と営業所技術者を誰にするかです。新しい会社の中では経管の「5年の経験」を積めないので、ほかの会社や個人事業で経験を積んだ人が役員に入る必要があります。ここが決まらないまま会社を作ると、作ってから許可が取れないことに気づくことになります。
営業所技術者を10年の実務経験で満たす場合は、前の勤め先の証明や工事の資料を集めるのに時間がかかります。会社の設立と並行して、早めに集め始めてください。
会社の目的に建設業を入れる
定款と登記の「目的」に、建設業(許可を取りたい工事)を入れておきます。あとから目的を変えるには、もう一度登記をしなければなりません。
役員報酬を決める
社会保険の資格取得届には、報酬の月額を書きます。株主総会などで役員報酬を決めておかないと、社会保険の手続きが進みません。 経管として取締役を迎え入れる場合は、就任と報酬を同時に決めるのが確実です。
2. 会社の設立と役員の登記
設立の登記は司法書士の先生にお願いすることが多いです。経管を外から迎える場合は、その人の取締役就任の登記も要ります。経管は「常勤の役員」なので、登記簿に載っていなければ申請できません。 許可申請には、就任が載った後の登記簿を使います。
3. 社会保険の手続き|社長1人でも加入します
日本年金機構は、厚生年金保険の適用事業所について次のように説明しています。
厚生年金保険の適用事業所となるのは、株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)です。
つまり会社は、社長1人だけでも健康保険と厚生年金に入らなければなりません。 建設業許可でも、適切な社会保険への加入が許可の要件になっていて(建設業法施行規則第7条第2号)、熊本県も加入していない場合は許可できないとしています。
手続きは次のとおりです。
- 「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を、事実発生から5日以内に年金事務所(または事務センター)へ
- 添付書類は法人の登記簿謄本(提出日からさかのぼって90日以内に発行されたもの、コピー不可)など
- 役員や従業員の「被保険者資格取得届」を同時に出す
雇用保険は、労働者を1人でも雇えば加入します。役員だけの会社は、雇用保険は原則として適用除外です(熊本県の社会保険の案内でも、法人の役員のみ等は健康保険・厚生年金が〇、雇用保険が-とされています)。
4. 通知書が届くまで、申請できません|ここがいちばん読みにくい
申請書に「事業所整理記号」を書く欄がある
建設業許可の申請書には、健康保険などの加入状況を書く様式(様式第七号の三)があり、そこに社会保険の事業所整理記号と事業所番号を書く欄があります。日本年金機構も、新しく適用事業所になった会社がほかの届出を電子申請するときについて、次のように案内しています。
新規適用届の処理完了後は日本年金機構から通知される適用通知書に記載の事業所整理記号および事業所番号を入力のうえ、申請してください。
つまり、事業所整理記号は、年金事務所の処理が終わって届く「適用通知書」で初めて分かります。 新規適用届を出した時点の控えには、この番号は入っていません。申請できる日は、この番号が分かる日と考えてください。
常勤性の確認にも、通知書を使う
熊本県では、令和7年12月2日から健康保険証による常勤性の確認ができなくなりました。代わりの書類として、県は次のものを挙げています(いずれか一点、写しで可)。
- 健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書の写し
- 市県民税特別徴収税額通知書の写し
- 賃金台帳(直近3か月分)
- 出勤簿(直近3か月分)
- 源泉徴収簿 など
設立したばかりの会社では、市県民税の通知書も3か月分の賃金台帳もまだありません。そのため、社会保険の資格を取ったときに届く「資格取得確認および標準報酬決定通知書」が、経管や営業所技術者の常勤性を示す中心の書類になります。
届くまでに、どのくらいかかるか
日本年金機構は処理日数を公表していません。当法人がこれまで見てきた範囲では、資格取得日から通知書の日付まで1〜3週間ほどでした。さらに、社会保険労務士の先生に手続きをお願いしていると、通知書は先生の事務所に届いてから会社に回ってくるので、手元に届くまでもう1〜2週間かかることがあります。書類に不備があって一度戻されると、さらに延びます。
社労士の先生には、「建設業許可の申請に使うので、適用通知書と決定通知書が届いたらすぐに回してほしい」と最初に伝えておくのがおすすめです。
保険料の領収書は、まだ無い
熊本県の早見表では、健康保険・厚生年金の加入を確認する書類として、保険料の納入告知書・領収証書、領収済通知書、社会保険料納入確認(申請)書(受付印のあるもの)の写しが挙げられています。どれも事業所整理記号と事業所番号が分かるものです。設立したばかりの会社は、まだ保険料を1回も払っていないことがあります。その場合は、納付を待たずに出せる「社会保険料納入確認(申請)書」を年金事務所で受け付けてもらう方法があります。これも事業所整理記号が付いてからでないと出せません。
5. 残高証明書|期限の1か月に気をつける
財産的基礎(一般建設業)について、熊本県の早見表は次のように定めています。
主要取引金融機関が発行する500万円以上の残高証明書又は融資証明書(証明日が申請日前1か月以内のもの…)。ただし、新規申請で直近の決算において自己資本の額が500万円以上の場合は財務諸表により確認
新設法人はまだ決算を迎えていないので、500万円以上の残高証明書を用意するのが基本です。ここで起きやすいのが、社会保険の通知書を待っている間に、残高証明書の1か月が過ぎてしまうことです。先に取ってしまうと、取り直しになります。
- 残高証明書は、事業所整理記号が分かって、申請の日取りが見えてから取る
- 資本金を払い込んだ口座が発起人個人の名義のことがあります。会社名義の口座で証明が取れるよう、設立後は早めに法人口座を作っておきます
6. 申請書類|決算前の会社ならではのもの
決算をまだ迎えていない会社は、いくつかの書類が決算後の会社と違います。
- 財務諸表:国のガイドラインは、新規設立の企業は「創業時における財務諸表」で判断するとしています。設立時の貸借対照表(開始貸借対照表)で作ります
- 納税証明書:熊本県の早見表では、新規設立などで決算が来ていない場合は「法人設立届の写し」で代わりにできます。県税事務所に出した法人設立届の控えを用意しておきます
熊本県知事の新規許可の手数料は、一般建設業で9万円です。熊本県収入証紙で納めます。
7. 申請から許可まで
当法人の実例では、熊本県に新規の申請をしてから許可が出るまで、2〜3週間ほどでした。書類に補正が入れば、その分延びます。
許可が出るまでは、500万円以上の工事を契約できません
許可が出る前に請け負えるのは、軽微な建設工事(1件の請負代金が500万円未満など)だけです。許可が出るのを見込んで、先に500万円以上の工事の請負契約を結んではいけません。 軽微かどうかは、1件の請負契約の代金で決まります。軽微な工事の範囲は建設業許可が不要な工事は?500万円の正しい数え方と無許可のリスク【熊本】で詳しく説明しています。
よくある質問
設立した翌日に申請できますか
できません。社会保険の事業所整理記号が分からないと、申請書の様式を埋められないためです。会社の設立から許可までは、順調に進んでも2か月前後を見ておいてください。
新規適用届の控えで、先に申請できませんか
新規適用届を出した時点の控えには、申請書に書く事業所整理記号が入っていません。番号が分かる適用通知書を待つのが確実です。
個人事業で許可を持っています。会社にしたら許可は引き継げますか
原則として引き継げません。熊本県の早見表でも、個人事業から法人にする場合は、原則として個人の廃業届と会社での新規許可申請が必要で、許可番号も新しくなるとされています。一定の要件を満たせば承継の制度も使えるので、会社を作る前にご相談ください。
電子申請はできますか
熊本県は令和5年1月10日から、建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)での申請を受け付けています。
出典・参考
- 適用事業所と被保険者(日本年金機構)
- 新規適用の手続き(日本年金機構)
- 電子申請における新規適用時の諸届に係る事業所整理記号・番号の入力方法(日本年金機構)
- 建設業法施行規則第7条第2号(e-Gov法令検索)
- 建設業許可事務ガイドライン【第7条関係】財産的基礎(国土交通省)
- 建設業許可に必要な書類【早見表】(R8.4~)(熊本県)
- 健康保険証での常勤性確認について(熊本県)
- 令和2年10月1日付建設業法改正に伴う「適切な社会保険への加入」について(熊本県)
- 雇用保険制度 Q&A~事業主の皆様へ~(厚生労働省)
まとめ
- 新設法人の許可は、経管と営業所技術者を決めるところから。会社を作る前に確かめます
- 会社は社長1人でも社会保険に加入します。事業所整理記号が分かる適用通知書が届くまで、申請はできません
- 通知書が手元に届くまで数週間かかることがあります。社労士の先生にすぐ回してもらうよう頼んでおきます
- 残高証明書(申請日前1か月以内)は、申請の日取りが見えてから取ります
- 設立から許可まで、順調でも2か月前後。許可が出るまでは500万円以上の工事を契約しません
ご相談ください
ノーサイド行政書士法人は、熊本の建設業許可を専門に扱う行政書士法人です。
- 会社を作る前の段階から、経管・営業所技術者の確認と、申請までの日程づくりをお手伝いします
- 司法書士(設立登記)・社会保険労務士(社会保険の手続き)の先生とも連携して、書類がそろう順番を組みます
- 決算前の会社の開始貸借対照表の作成、残高証明書を取るタイミングのご案内もいたします
「いつ許可が取れるか」は、会社を作る前の段取りでほぼ決まります。 お早めにご相談ください。


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