一人親方でも、要件を満たせば建設業許可は取れます。 珍しい話ではありません。
ただ、実際にご相談を受けていると、つまずくのはいつも同じ3か所です。実務経験10年の「証明」・自己資本500万円・常勤性の書類。ここを先に知っておくと、準備の順番が変わります。
この記事では、①いくらの工事から許可が要るのか ②一人親方が満たす4つの要件 ③つまずきやすい3点 ④費用と手順を、熊本県で実際に申請している立場から、金額と根拠つきで整理します。
結論 取れる
ただしメリデメあり
建設業許可をとれば仕事の幅が大きく広がり、元請けからの信頼を得ることも可能です
たとえ一人親方であっても
要件を満たすことで建設業許可を取得することが可能です
許可の有無が仕事の受注に直結してしまうこともあるためある程度一人親方として経験を積んだら建設業許可の取得を検討するのをおすすめします!
建設業許可を取るメリットは次の3つ!
①500万円以上の工事や公共工事が受注できる
あらかじめ建設業許可を取得しておけば工事の依頼が来たときや会社に求められたときも慌てずに対処することができます!
②信用度が向上する
建設業許可を取得している一人親方はそう多くはないので取得しておくことで他業者と差別化を図り信用度を向上させることが可能となります!
③法人と比べると手続きが難しくない
一人親方であれば法人が提出すべき書類が必要ないため比較的短時間で許可を取得しやすいです!
一人親方が建設業許可を取得するデメリット
①取得に費用が発生する
②5年に一度更新や変更手続きが必要になる
③決算報告が必要になる
詳しくは以下のホームページから最新情報をご覧ください。
そもそも、いくらの工事から建設業許可が必要なのか
ここがはっきりしないまま「取ったほうがいいのかな」と悩んでいる方が多いところです。基準は金額で決まっています。
| 工事の種類 | 許可がいらない範囲(軽微な建設工事) |
|---|---|
| 建築一式工事 | 1件の請負代金が1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅 |
| 建築一式以外(とび・土工、塗装、電気、管、内装など) | 1件の請負代金が500万円未満 |
つまり、500万円以上の工事(建築一式なら1,500万円以上)を請けるなら許可が要ります。
見落としやすい2つの落とし穴
- 金額は税込で判定します。 国土交通省も「上記金額には取引に係る消費税及び地方消費税の額を含みます」と書いています。税抜490万円の工事は、税込539万円なので軽微な工事に入りません。 ここで引っかかる方が本当に多いです。
- 注文者が材料を支給したときは、その材料費(と運送費)も足して判定します。 手間だけの請負のつもりでも、材料を足すと500万円を超えることがあります。
一人親方が満たす4つの要件
| # | 要件 | 一人親方の場合 |
|---|---|---|
| ① | 経営業務の管理責任者等 | 本人が個人事業主として5年以上やっていればよい |
| ② | 営業所技術者(旧・専任技術者) | 本人がなれる。資格、または実務経験10年以上 |
| ③ | 財産的基礎 | 自己資本500万円以上、または500万円以上の資金調達能力 |
| ④ | 欠格要件に当たらないこと | 5年以内に許可を取り消されていない、など |
① 経管は「本人の5年」で足ります
法人の役員でなくても構いません。個人事業主本人の経験がそのまま使えます。
令和2年10月の改正で「業種を問わず建設業に関する経営経験でよい」に緩和されているので、塗装で5年やってきて、内装で許可を取る、というのも通ります。
その5年を示す一番の書類が、毎年の確定申告書の控えです。5年分そろえてください。「税理士さんに任せていて手元にない」という方は、早めに取り寄せの段取りをしておくと安心です。
② 令和6年12月13日から、「専任技術者」は「営業所技術者」に変わりました
名前が変わっただけで、中身の要件は同じです。ただし様式が変わっているので、古い様式を使うと差し戻されます。
一般建設業の営業所技術者になるルートは3つです。
- 実務経験10年以上(許可を受けたい業種で)
- 指定学科を修めていれば短縮:高校卒業後5年以上/大学・高等専門学校の卒業後3年以上(専門学校卒は5年、専門士・高度専門士は3年)
- 国家資格があれば年数は不要
ここで2つ注意があります。
- 指定学科は業種ごとに決まっていて、学科名が1字でも違うと使えません。 卒業証明書と成績証明書を添えて、申請先に確認してください。
- 2級の施工管理技士は「種別」で使える業種が変わります。 たとえば内装仕上工事の営業所技術者に使えるのは、2級建築施工管理技士の種別「仕上げ」です。種別「建築」は建築一式のみ、「躯体」は躯体系のみです。1級は種別なしで広くカバーします。
③ 財産的基礎の500万円は、「許可が要る500万円」とは別物です
同じ500万円という数字が2回出てくるので、ここは本当によく混同されます。工事の金額の話ではなく、会社の体力の話です。
一般建設業なら、次のいずれかを満たせば足ります。
- 自己資本が500万円以上あること
- 500万円以上の資金調達能力があること
- 直前の過去5年間、許可を受けて継続して営業した実績があること
熊本県の早見表には「主要取引金融機関が発行する500万円以上の残高証明書又は融資証明書(証明日が申請日前1か月以内のもの)」と書かれ、ただし書きで「新規申請で直近の決算において自己資本の額が500万円以上の場合は財務諸表により確認」とあります。
ただし、実際の窓口では、新規のときは残高証明書を求められます。 当事務所では、自己資本が足りている会社でも新規申請では必ず取っていただいています。証明日から1か月しか有効ではありません。提出日から逆算して取ってください。提出がずれると取り直しになります。
④ 社会保険は「一人親方だから入っていないとダメ」ではありません
令和2年10月1日以降の申請から、適切な社会保険への加入が許可の要件になりました。ただし一人親方は適用除外です。
| 健康保険・厚生年金 | |
|---|---|
| 法人 | 加入が必要 |
| 個人・従業員5人以上 | 加入が必要 |
| 個人・従業員5人未満(一人親方を含む) | 適用除外。国民健康保険+国民年金でよい |
「社会保険に入っていないから許可が取れない」と言われて相談に来られる方がいますが、一人親方であればその心配は要りません。
つまずくのは、たいていこの3つです
つまずき1:実務経験10年の「証明」が集まらない
10年やっていること自体は、皆さんクリアしています。問題は、それを紙で示せるかです。
許可を持っていない事業者での実務経験は、契約書・注文書・請求書などで年数分を裏づけます。1年に1件では足りず、期間が途切れていないことを示す必要があります。
そしてここが都道府県でいちばん差が出るところです。
- 熊本県:入金確認資料(通帳の写し)までは求められません
- 東京都・埼玉県:請求書と通帳(入金確認)をセットで、10年分求められます
「10年分の請求書、探せばありますか」を最初に聞くようにしています。ここが無理そうなら、資格を取るほうが早いこともあります。
つまずき2:常勤性の書類(熊本県は令和7年12月2日から健康保険証が使えません)
紙の健康保険証は2024年12月2日に新規発行が終わり、経過措置も終了しました。熊本県は「令和7年12月2日以降、健康保険証での常勤性確認は無効」とはっきり出しています。
熊本県で代わりに認められるのは、次のいずれか1点です(すべて写しで構いません)。
- 健康保険・厚生年金保険 被保険者標準報酬決定通知書の写し
- 市県民税特別徴収税額通知書の写し
- 賃金台帳(直近3か月分)
- 出勤簿(直近3か月分)
- 源泉徴収簿
そして一人親方の方に大事な話がひとつあります。 熊本県に確認したところ、個人事業主の一人親方本人については、経営業務の管理責任者・営業所技術者の常勤性は求められないという回答でした(2026年7月31日・県監理課への電話確認)。この扱いは県のホームページにも手びきにも書かれていません。上の5点はいずれも「給与を払う側」の書類なので、そもそも一人親方には出しようがない、という整理です。
電話で確認した内容なので、他県には流用しないでください。
つまずき3:許可を取る前に、500万円をまたぐ工事を請けてしまう
許可は、申請してすぐ出るものではありません。 熊本県の標準処理期間は25日です。書類に不足があれば、そこから伸びます。
「来月から500万円の工事が決まったので、今から許可を」というご相談をよくいただきますが、多くの場合、間に合いません。準備(証明書類集め)に1〜2か月、審査に約1か月と見てください。
なお、1件の工事を500万円未満に分割して契約するのは、原則として認められません。同じ工事を分けただけと判断されれば、無許可営業になります。
費用と手順(熊本県知事許可・一般・新規の場合)
手数料
| 申請の区分 | 知事許可(一般のみ、または特定のみ) |
|---|---|
| 新規 | 9万円 |
| 業種追加 | 5万円 |
| 更新(5年ごと) | 5万円 |
熊本県の知事許可は熊本県収入証紙で納めます。不許可になっても返ってきません。(一般と特定の両方を同時に申請する場合は、それぞれ倍額です)
このほかに、残高証明書の発行手数料(銀行によって数百円〜)、身分証明書・登記されていないことの証明書の取得費用、行政書士に依頼する場合は報酬がかかります。
手順
- 要件が満たせるかを確認する(経管5年・営業所技術者・財産的基礎)
- 証明書類を集める(確定申告書5年分、実務経験の裏づけ、残高証明書、身分証明書、登記されていないことの証明書 など)
- 申請書を作る(電子申請のJCIP、または紙)
- 熊本県土木部監理課建設業班へ提出する(県庁本館11階/平日 午前9時〜11時30分、午後1時〜4時30分)
- 審査(標準処理期間25日)
- 許可通知書が届く
許可が出たあとは、毎年の決算変更届(事業年度終了届)と、5年ごとの更新が続きます。 特に決算変更届は、出していないと更新申請そのものを受け付けてもらえません。ここは取得後の話ですが、最初に知っておいてください。
令和6年12月の改正で変わったこと
- 「専任技術者」が法律上「営業所技術者」になりました(令和6年12月13日施行)。特定建設業では「特定営業所技術者」です。様式も変わっています。
- 同じ日から、営業所技術者が工事現場の主任技術者を兼ねられる特例(建設業法26条の5)が始まりました。一人親方のうちは営業所も現場も本人なのであまり関係がありませんが、従業員を雇って営業所を構える段階になると効いてきます。
熊本県での話です。県によって扱いが違います
ここに書いたのは、熊本県で申請する場合の話です。知事許可は都道府県ごとに必要書類と運用が違います。
- 実務経験の裏づけ:熊本県は通帳(入金確認)まで求めませんが、東京都・埼玉県などは請求書と通帳をセットで求めます
- 常勤性の書類:熊本県は賃金台帳・出勤簿・源泉徴収簿でも通りますが、県によってはこれらを認めず、年金事務所や税務の記録に絞っているところもあります
申請先の都道府県の手引きを必ず確認してください。 熊本県以外の方は、その県の行政書士にご相談いただくのが確実です。
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当事務所のご紹介

当事務所では、建設業許可を中心に変更届・経営事項審査・産業廃棄物関係の許可・申請書の作成代行を行っています。また、令和5年1月からスタートした電子申請(JCIP)にも対応しており、お客様に寄り添ったサービスを提供しております。
当社は行政書士としては数少ない経済産業省認定の「認定経営革新等支援機関」です。数多くの事業者様の支援をしてきた経験からご依頼者様のお悩みをワンストップで解決出来ることが強みです
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